映画『アメリカン・ビューティー』情報
1999年アメリカ映画 122分 原題 American Beauty
監督 サム・メンデス
ケヴィン・スペイシー・・・レスター・バーナム/広告代理店の平社員。42歳
アネット・ベニング・・・キャロライン・バーナム/レスターの妻。不動産屋で働くキャリアウーマン
ソーラ・バーチ・・・ジェーン・バーナム/レスターとキャロラインの一人娘
ウェス・ベントリー・・・リッキー・フィッツ/バーナム家の隣に引っ越してきたフィッツ家の息子。麻薬の売人をしている
ミーナ・スヴァーリ・・・アンジェラ・ヘイズ/ジェーンの親友
ピーター・ギャラガー・・・バディ/不動産王。キャロラインと不倫関係になる
クリス・クーパー・・・フランク・フィッツ/レスターの隣に引っ越してくるフィッツ家の家長。元海軍大佐
映画『アメリカン・ビューティー』ネタバレあり感想
①中年の危機
なんとも悲しい話でした。何でもない日常の不満が積もり積もって爆発する、ということはよくある話ですが、それが偶然重なってとんでもない悲劇を招く。
主役のレスター（ケビンスペイシー）とキャロライン（アネットベニング）夫妻は40代。郊外に立派な一軒家を建て、それぞれ立派なキャリアを持って金銭的にも困らず、一人娘も高校生になって、と一見順風満帆な人生を送っているワケですが、ふと自分の人生が全然満足いくものではないということに気づいてしまう。
ちゃんと地に足をつけて生きてきてすごいことなのに。
『不満はあるけど、まあこれが自分の人生なのだから仕方ないと思わなくちゃ！』
と思っても、そんなに諦めきれない自分がいるというのは痛いほどよくわかります。
これは、よっぽど自分の人生に満足してない人以外、たいていの人はぶち当たる壁なんじゃないでしょうか。
この夫妻のことが人間的に好きか嫌いは別にして（全然好きじゃない！（笑））、でも、二人は決して根っからの悪人ではない人たちなのに、なぜあんな悲しい最後を迎えなければならなかったのか？
見終わった後、
「人生って空虚だな・・・」と思ってしまいました。
一応、コミカルな家庭崩壊ドラマ、とあり、確かにコミカルと言えばコミカルで、笑っちゃうシーンも多いんですが、印象に残ってるのは、道端で風に舞うビニール袋。
悲しいお話でした。
②娘の友達に欲情する父親ってなし！
レスターがコミカルなところもあるのに、頑張ってる主人公なのに！好きになれない最大の理由。
私は自分が女性なので、【正直】と言われようとも、【悲しい性】だといわれようとも！娘の友達（しかも高校生）に発情する父親ってのは、全くなしです！
途中からレスターの心情が何となく理解できるような気がしてきましたが、それまでは本当に
「気持ちわるっ」
と心の底から思っていました。（すいません。）
でもこれは、世の中の女性たちの声だと思うんですけどね。娘のジェーンに嫌われても仕方ない。しかも相手は高校生・・・。
いや、やっぱり気持ち悪いですよね？？？
『セブン』といい『ユージュアル・サスペクツ』といい、問題は指摘されてますがケビン・スペイシーはすごい役者さんだな、と思います。
③自分で自分を受け入れることが大事
人間、あんまり自分の感情を押さえこみすぎるととんでもないことになるぞ、という警告かとも思いました。
理想の自分と本当の自分とのギャップは誰にでもあると思いますが、たとえそれが嫌なこと（怖いこと？）だとしても、本当の自分を少しは自分で受け入れてあげないと、どっかで無理がたたって破綻してしまう。
この作品ではその代表がお隣さんのフランク・フィッツ大佐でした。
フランクには最後の最後まで騙されました。単なる、家父長制を重んじる嫌な頑固おやじだと思ってたんですが、ゲイだったとは。
自分はゲイじゃないと自分を否定することで、自分の抑圧された不満がたまりにたまって、周りの人間も不幸にする。
フランクを演じる役者さんのクリス・クーパーが上手すぎるんだと思うんですが、負のエネルギーが画面からも伝わってきて、出てくるだけで嫌な威圧感。
すごいなあと思いました。
それにしても、日本でもLGBTQに対して差別があると言われていますが、アメリカ人や外国の方の嫌悪の様のほうがひどいと思うんですよね。（なんか、同性愛者だというだけで死刑の国もあるのだとか・・・）
私の考えが浅いのかもしれませんが、なんで人のことなのにそんなに口出してくるんですかね？
こういう映画を見るといつも不思議に思います。
そしてフランクの息子のリッキー。この役者さんの特徴なのかもしれませんが、何か達観した、もっと言うと、諦観した感じが作品全体を表現している感じがしました。（やはり役者は目が大事。）
虚飾は過ぎると悲劇を生みかねないな、と改めて思いました。
みんな幸せを求めてたのにね。
とても悲しいお話でした。