映画『イカとクジラ』情報
2005年 アメリカ映画 81分 原題 The Squid and the Whale
監督 ノア・バームバック
ジェフ・ダニエルズ・・・バーナード・バークマン/父。元人気作家。今は落ち目で教職で生計を立てている。教え子と同棲中
ローラ・リニー・・・ジョーン・バークマン/母。現在の人気作家。恋多き女性で自分の恋愛遍歴を息子たちに隠さない
ジェシー・アイゼンバーグ・・・ウォルト・バークマン/バーナードとジョーンの長男。16歳。両親の離婚でバーナード(父)についていく
オーウェン・クライン・・・フランク・バークマン/バーナードとジョーンの次男。12歳。両親の離婚でジョーン(母)についていく
映画『イカとクジラ』ネタバレあり感想
①暗い気持ちになりました
私は見終わってとても暗い気持ちになりました。両親が離婚する話です。
だから暗いトーンで映画が進んでいく、ということはありません。くすっと笑えるシーンも沢山あります。でも、なんていうのか、もしかしたらリアルすぎたのか?そして私が夢見る夢子だからなのか、とにかく暗い気持ちになりました。
②共感できる人物がいない
まず、父にも母にも共感できず好きにもなれませんでした。
母は潔いといえば潔く、ある意味男っぽいあけっぴろげな女性なのかもしれませんが、自分のサガを子どもたちに隠しません。
長男の友達の父親とも次男のテニスの先生とも、気になる人とはとりあえず付き合ってみる、というような恋多き女性。
私は自分が割と閉鎖的な人間なのか、自分が息子の立場だったら、
「まあ好きになっちゃったら好きになっちゃったでしょうがないかもしれないけど、少なくとも僕たちには隠してみたらどうだい?」
などと思ってしまうなあと思いました。親の恋愛事情とかどんな気持ちで聞けばいいのか?
もちろんお母さんは作家さんなので一般的な感覚とはまた違うのかもしれませんが。
(急に頭の中で瀬戸内寂聴さんが浮かんでしまった(汗))
かたや父親はこちらも作家さんですが、お母さんが現在売れっ子の作家なのに対して、お父さんは【元】人気作家で、今は落ち目の作家。教職で生計を立てており、頭でっかちな理論主義で、いわゆる≪本物≫しか認めないタイプです。
母親の作品はレベルが低いものとして上から見下してる感じで、またそれを隠そうともしません。
偉そうな態度で
「あんた、口ばっかじゃない!」
と言ってやりたくなるタイプ。
同業者同士って難しいという話もよく聞きますが、正直こんな態度取られたらお母さんも
「そりゃ離婚するよね」
と思いました。
長男は父の影響をもろに受けてて、父の言うことが全て正しいと思っています。それだけならまだしも、父の意見をそのまま自分の意見として人にいうような、実際は中身スカスカな奴です。
それでいて、周りの同級生をレベルが低いと見下していて、スカスカな上に嫌なやつです。
学校で自作の曲を披露するシーンがあるんですがその歌も、平気で有名な作品を自分のものとしてパクるやつ。人間性にもモラル的にも色々問題がある人物です。
次男は長男とは全く反対のタイプで、状況に順応するのも早いし、感情にも素直ですが、母の影響を受けたのか、理性を取っ払って、本能の赴くまま行動します。まだ12歳なのに隠れてビール飲んだり(その時はいつもなぜか上半身裸)、特に気持ち悪かったのが、自分の精液を図書室の本になすりつけたりします。(このシーン、気持ち悪さのあまりに観ている途中なのに叫んでしまいました(汗))
兄も弟もどっちも大問題ですが、弟みたいな子をもし自分が持ったら
「どうしたらいいのか」
と途方に暮れるしかないなと思いました。
③コメディなのか?
何というか、共感できる人物もいないのに、だからと言って、
「こんなのあり得ない」
という気持ちにもならず、むしろ逆に
「これが、現実の人間というものなのか?」
と思い、暗い気持ちになりましたが、ラストは良かったです。
長男が博物館に『イカとクジラ』という作品を観に行くのですが、なくしてしまった自分の感情を見つけに行く、みたいなシーンだと、私は勝手に思ってるのですが、(正確にはわかりません・・・)
音楽もかっこ良くて、また感情が一切なかった長男の感情が揺さぶられているのが伝わってきて、このラストには本当に救われました。
それまでずっと眉間にしわを寄せてみていたから余計かもしれませんが(汗)。
なんでも、この作品はコメディ、なんだそうです。
インテリ家族の話で、私は知的じゃないので笑えなかったのかもしれませんが。
何回か見ると色々自分の中でかみ砕けてくるのかも・・・。
メンタルが安定している時に観ることをお勧めします。
アンナパキン(映画『ピアノレッスン』の娘ちゃん)が出てて驚きました。